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先頭集団を追い抜いたのは


2026.3.1


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 その日はあまりに色々なことが起こりすぎて、なかなか眠りにつけなかった。少しウトウトしかけたとき、面白いイメージが浮かんできた。うどん、蕎麦、ラーメンが競走している。やっぱり私はうどんが一番好き、いやいや、この前はお蕎麦が一番と言っていた、いや、ラーメンの美味しさを最近認識し直したじゃないか。入れ代わり立ち代わりトップが変化している。そんな時、そのわきをスルっと抜けて、トップに躍り出たものがある。何と、新顔の韓国冷麺である。ああ、もう一度食べたい。深夜に浮かんだイメージは消えなかった。

 実は、その日の昼、子供たちと十数年ぶりに焼肉のレストランに入った。正直なところ、最近は胃の調子があまり良くなく、焼肉を食べる気にはならなかった。メニューを見ると、焼肉以外にも麺類やご飯ものがある。そこで、一番さっぱりしていそうな「韓国冷麺」に初挑戦してみることにした。麺もスープもこれまで食べたり飲んだりした麺類とは全く違っていた。さっぱりして美味しく、胃にも全く問題なかった。幸せな気分を味わった。

 食べ物に対する初挑戦というのは、必ずしも幸せな結果に終わるわけではない。最近では、インドのベンガルールに滞在した時に、カレーで胃がダメージを受けてしまった。もう一生カレーとは距離を置こうと決心したほどである。その昔、ベトナムのハノイで食べたフォーも口に合わなかった。そのため、初めての料理からは距離を置いてきた。でも、初めてを知る楽しさも捨てがたいものがある、と気づかされたからには、挑戦再開の時かもしれない。

 実は、料理やお菓子作りにあまり興味がなかった。というか、レシピを見ただけで「面倒だな」と感じてしまい、挑戦する気が湧かなかった。しかし、最近になって、様々な食材の各々が、味や食感のどれに関係しているのか調べてみたい、という気持ちが湧いてきた。そこで始めたのが、身近な食材だけで最もシンプルなクッキーを作ることである。サクサク、ふんわり、もっちり、は何によるものなのか。出来立ては美味しいのに、日がたつとパサパサになるのは何故なのか。どうやったらそれが避けられるのか。実験してみよう。

 材料は常備しているものだけ。それを混ぜてオーブントースターで焼くだけである。現段階では、一番単純でかつ美味しかったのは、小麦粉、砂糖、サラダオイルを混ぜて、一口サイズにして焼いたクッキーだった。サクサク感が半端なく、日がたっても変化しなかった。ただ、手で割るとすぐ砕けてしまう。それを改善するためには、量の調整、焼く温度、時間の調整が必要である。サラダオイルの代わりにマヨネーズを使ったものは、ふんわり感が加わり、結構おいしかった。ただ、日が経つと固くなってきて美味しさが半減する。この実験による最終目標は、最もシンプルな形から初めて、材料を増やし、自分の理想のクッキーにすることである。あくまでも普段使っている材料と器具だけでどこまでいけるだろうか。できたものは決して廃棄しないと決めているので、胃にもやさしくしなければ。

 ずっと先頭を走っていて二度と食べられないものは「母が作ってくれた海苔巻き」である。クッキーに飽きたら、当時の味の再現に挑戦だ。酢飯の味も、煮た干瓢の味も現代のものよりもきつめだった。食中毒を防ぐためだったのだろう。胃袋さん、それまで頑張ってね。

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