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私が仕事で筋を通してきたもの


2024.9.29


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 学校を卒業し仕事をするようになって50余年経つ。一貫して情報技術(IT)関連の仕事に携わってきた。でも、仕事というものは自分で選ぶことは少なく、大半は与えられたものをこなすことが多い。その結果、歴史に残る偉業を成し遂げたわけではなく、ただひたすらその時点での問題解決に奔走してきたのが実情である。ITはこの50年間で大きく進歩し、過去の技術が陳腐化していることは否めない。とすると、私のしてきたことは現代ではあまり意味がなく、価値のないものではないのか。そのような考えも起きてしまいがちである。

 季節は一気に秋となり、ウォーキング中などに様々なことを考える時間が生まれるようになった。その中で、冷静にこの50余年間に自分のやってきたことを辿ることができた。その中で、してきたことの全体を見たとき一本筋が通っていたのではないかと気づいた。それは、一貫して意識して行ってきた次の3点である。
(1) 情報技術(IT)を人々の生活を良くするために使うことを目指す
(2) そのために開発者(IT技術者)の生産性を上げてより迅速に、品質のよいものを実現するための技術を開発する
(3) そのために、最先端の情報技術(IT)をできる限り利用する
すなわち、時代が変わり、技術が進歩しても、常に最先端の技術を使って技術者の生産性を高め、最終的に人々の生活を迅速に、安全に、より良くすることを目指してきた。

 最初に携わったのは、新しいコンピュータ言語のコンパイラを開発するための技術開発だったが、50余年前の私は、まさに上記の3点を念頭に置いていた。

 30歳代には、医師のデータ管理のIT化や、電力会社の情報流通や管理のシステム開発にWSを利用するシステムの開発に携わったが、これらも上記3点が重要だった。

 40歳代には、主として(2)(3)に軸足を置いて、ソフトウエア開発の生産性を高める方法論の開発とそのコンサルティングを行っていたが、前提として(1)が最重要であることに変わりはなかった。

 50歳代には、主として(1)に軸足を置いてコンサルティングのビジネス企画と実施を仕事にしていたが、もちろん、それを実現するための(2)(3)を忘れてはいなかった。

 60歳代以降は新たなIT人材の育成に力を尽くしてきたが、そこでは(1)の重要性を前提とした(2)と(3)の行える人の育成を行っている。

 こうして過去を振り返って、自分は筋の通った仕事人生を歩んできたと胸を張ってみたが、何となく物足りない。将来に向けての意気込みがなければ意味がない。これらの3点は、将来に向けても我々の豊かな生活のために必要であると主張していくべきなのだ。  今まさに問題になっているマイナンバーカードの活用推進を例に挙げる。(1)人々の生活を良くするという観点から行われているだろうか。(2)迅速に品質の良いシステムを作る技術が整っているだろうか。(3)そのために最先端の技術を活用しようとする努力がなされているだろうか。いずれも不足していると言わざるを得ない。やるべきことは多い。

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