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継続するのも止めるのも難しい


2024.4.07


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  この歳になって改めて思う。もしも人生をかけて夢中になれるものを見つけられて、努力を継続していたら、もっと高みをめざせたかもしれない。ところが実際は、まともな論文すらひとつも書けなかった。歴史に残る成果などとてもあげられてはいない。しかも、集中力を失ってきている高齢になって、飽きっぽい傾向はますます強まっているようだ。

 最近、多言語をしゃべる「マルチリンガル」の人の認知症の発症率が低い、つまり、認知症になりにくいということが広く言われるようになっている。様々な根拠となりそうな要素が報告されているが、要は、脳の働きが継続的に強化されるからのようである。それに影響されて、ブラジル・ポルトガル語を徹底的に学んで話せるようになろう、と決心した。毎日数時間はポルトガル語の音源を聴くようにした。さらに文法の教科書を使って、視覚(読む)、手(書く)からの訓練も行っている。その結果は確かに現れている。朝には前夜よりポルトガル語の発音と意味が明確に結びついた形で聴こえることが多くなっている。一方で、こんなことを続けていてもしゃべれるようにならないのではないか、というネガティブな意識も湧き出てくる。しかし、日記帳を確認したところ、まだ始めて3週間も経っていないではないか。私ときたら何とせっかちなのか。まず3か月、そして3年だ。

 このように、すぐ止めたくなる気持ちを抑えて継続する努力をしているものがある一方で、止めたいと思いつつもなかなか止められないものも多い。その理由として大きいのは、止めづらいシステムの存在とそれを面倒と感じる心理的な抵抗感ではないか。

 この数年の間に何とか止めることのできたものはいくつかある。最初は何十年と購読していた新聞2紙(経済紙と一般紙)であった。これを止めて日経電子版を契約した。パソコンやスマホでどこででも読めるので本当に良かったと思っている。次には、定期購読していたビジネス誌を2つ解約した。仕事にそれほど影響はないと思われたからである。こちらは、購読継続の通知が来たタイミングでうまく解約できた。ちょっと苦労したのはクレジットカードの解約である。解約方法はネットで調べてすぐわかったものの、手順は複雑で躊躇した。しかし、やってみると案ずるより産むがやすしで意外に簡単にできた。

 一番時間がかかったのはインターネットと固定電話を利用するための光回線の解約である。その理由は大きく3つある。(1)契約書を読んで解約方法を確認する手間、(2)解約することで影響する範囲を調べる手間、(3)違約金が発生しない2年ごとの契約更改期間に解約したいという思い。これらにより、決心してから完了まで4年間もずるずると引き摺ってしまった。私の学んだことは次の通りである。(1)は契約時に必ず解約することを想定して準備しておくべきである。(2)は複数サービスをまとめることで安くなるという料金設定に安易に乗せられないようにすべきである。(3)は決心した時に解約した方が結果的に損は少ないと言うことである。何事も始めるときに止める道を付けておく必要がある。

 過去の経験から、私はサプリを含む食品の定期購入は一切していない。嵌ったら抜けられなくなる恐れがあるからである。体に入るものを止められないのは一番恐ろしい。

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