最近はまっていることとして、タイ語とアラビア語を耳からだけで習得しようという試みがある。タイ語についてはすでに述べたので、アラビア語について取り上げたい。タイ語と比較すると言葉は捉えやすい。しかし、音源の量が少ないせいもあって、意味を捉えるのが非常に難しい。それでも少しずつ解明されていくのが面白くてたまらない。
まず音源の中で気になったのは、「アイヨ」がやたら出てくることである。これは、はい(yes)の意味で使われているようだ。「アイヨ、アイヨ」とか「アイヨ、シュワイヨ」とかが聞き取れる。いいえ(no)は「ラー」である。返事するときの「はい」は「ハーダル」のようだ。ところが、アラビア語の翻訳サイトで調べてみると、どこにも「アイヨ」「ハーダル」など出てこない。一体これはどういうことなのか。アラビア語は方言が多いらしい。一体私はどこの地域のアラビア語の音源を聴いているのだろうか。
ふとしたことから在エジプト日本大使館のサイトにたどりついた。その中の、「非常時のアラビア語」の表の中に、「はい/よい(good)」は「アイワ/クワイエス」であると記載されていた。「アイヨ、シュワイヨ」に似ていなくもない。少なくともアラビア語の翻訳サイトに出てくるものよりはずっと近い。私はアラビア語のエジプト方言を聴いているのか。でもやはりちょっと違う。言語を学ぶのに先生がいないということはやはり大変だ。
以前スワヒリ語にはまっていた時、「ピリピリ」が「辛い」であることを知った。日本語でも「ピリピリ辛い」という言い方をするので、人間の考えることは地域が違っても同じなのかな、と面白く思った。しばらくして、あるサイトで日本語の「ピリピリ」のルーツがポルトガル人が伝えたスワヒリ語、ということを知った。ヨーロッパでも「辛い」を「ペリ」と言うことがあるそうである。さらに、南アフリカには「ペリペリ・ソース」という辛いソースがあると旅番組で紹介されていた。まさに言語の広がりは地球規模だ。
ポルトガル語の「辛い」についても面白い発見があった。私は、ポルトガル語はスペイン語の方言ぐらいの感覚でいた。だから、スペイン語やイタリア語で「辛い」を「ピカンテ」と言うので当然ポルトガル語もそうだろうと思い込んでいた。事実、ネットで検索してもそれ以外のものは出てこなかった。しかし、私の聴いていたポルトガル語の音源では、一度もピカンテが出てくることは無い。出てくるのは「アジ―ド」である。一体これは何なのだ。しばらく悩み続けていたが、ある時、ブラジルでは料理が辛いかどうか尋ねるとき「アジ―ド」を使うということをネットで知った。ポルトガル語がブラジルで使われていることを忘れていた。私が聴いていたのはブラジルのポルトガル語だったのか。まさに方言は地球規模ではないか。それにしてもポルトガル人というのは大きな影響を地球上に与えたものだ。
さて、もしもエジプト人から「エジプトに来たいですか?」と聞かれて「アイヨ、アイヨ」と答えたらどう言われるだろうか。「そんな言葉は今時使いませんよ」「それは子供の言葉ですから大人が言ったらおかしいですよ」などと言われるのではないか、と心配になる。やはり現地の人とふれあうことでしか本当の言語習得はできないのかな。
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所長:石田厚子 技術士(情報工学部門)博士(工学)
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方言は地球規模だ
2024.2.18