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最初の一歩さえ踏み出せば


2023.8.20


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 今年の夏は、迷走する台風とゲリラ豪雨に翻弄された。それでも、いつしか秋の訪れが感じられるようになっている。例えば、アイスコーヒー一辺倒だったのにいつの間にかホットコーヒーが美味しいと感じる。そのせいだろうか、ウォーキングの時間も徐々に延びて2時間以上になる日も増えた。しかし、出かけるまでの逡巡する時間はなかなか減らない。

 ウォーキングに出る前には、まずスマホで天気予報を調べ、外に出て暑さや風の強さを確認する。熱中症になりそうではないか、ゲリラ豪雨にぶつかるのではないか、などを確認している様に見えて、実は「行きたくない」という気持ちを正当化する理由を探している。

 高齢になってから何らかの行動をためらわせる要因として大きいのは「体が感じる不快感」である。例えば、私自身は高齢になって飲酒量が減った。これは飲酒が体に良くないと言われたからではなく、飲酒後の不快感が増したからである。同様にウォーキングに出かけるのをためらわせるのは、歩き始めて30分間の足腰の痛みがつらいからである。これは両方の足に別々の時期から別々の要因で生じるようになったもので、日常生活に大きな支障になるほどのものではない。しかし、ウォーキングをためらわせる要因にはなりうる。

 身体の不快感を振り切ってでも出かけるためにはそれなりの別の理由が必要である。例えば途中で買い物をする、空き地だった場所がどうなったか確認する、別のルートを発見してみる、などである。それが見つからない場合は、ウォーキングした後の快感を思い出す。しかし、この時期は背中を押すにはいずれも弱い。とにかく出かけてしまうしかない。

 最初の30分はとにかく歯を食いしばって頑張って歩く。すると痛みはほぼ消える。次の30分は自分で設定した休み場所に着くのを楽しみに歩く。これは公園の日陰になったベンチなどが多い。そこで風に吹かれながらスマホを眺める。そして、後半はひたすら帰るだけである。足は勝手に動いてくれるので様々な考え事をしながら歩く。夏は流れる汗を拭きながらになるが、風も汗を吹き飛ばしてくれて心地よい。一種のハイな状態にすらなる。1時間以上歩いて自宅に到着する。その時の快感と達成感は何物にも代え難い。これこそがまたウォーキングしようとする気持ちにつながるのだが、次の日にはかなり弱くなってしまう。

 迷ったら、とにかく最初の一歩を踏み出すこと、これは多くのことに共通した事実ではないだろうか。最初の段階を突き抜けてしまえば後は何とか回り出す。そして、徐々に何も考えなくとも回っていく。結果として達成感が得られる。問題は、どうやったら最初の一歩が踏み出せるかである。目的を明確にするのは有効なのだが、生身の人間はそれだけでは動けない。ここでは、自動的に動かざるを得なくすること、一歩踏み出す時の障害をできるだけ取り除くことを考えたい。 ウォーキングの場合を考える。かつての勤め人時代のように同じ時間に出かける癖をつけるとよい。歩きやすい靴、好きな服、持ち物はできるだけ小さく軽くする。最初に選ぶ道は信号機ができるだけ無いのも重要である。ゲリラ豪雨が来ても帰りやすいようにまずは短めのルートにしておいて、気分が乗ったら延ばす。全く、人間は面倒な生き物だな。

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