3月7日、電車で移動中にスマホにニュース速報が届いた。H3ロケット初号機打ち上げ失敗と知り力が抜けた。詳細な情報が知りたくて報道番組を観てみたものの、野球のWBCの話題ばかりで殆ど話題に上っていなかった。私自身の関心事と世の中の関心事はかなりへだたりがあると実感した。あれから2週間、ウクライナも統一教会もルフィーもどこかに行ってしまったように、メディアはWBC一色である。通常、大人は周囲とのコミュニケーションを取るために無理をしてでも話を合わせるし、そのために情報収集もする。結果として国中が共通の話題で一色となる。でも本当にそれでよいのだろうか。
10年前にはこの私でも女性の活躍というテーマで講演を頼まれることがあった。それが無くなったのは「受けなかった」からだろう。男女雇用均等法ができるはるか昔の団塊の世代の女性がどうキャリアを積もうとしていたか、など現代の女性たちにとっては「日本昔話」のようなもので何の価値もないと思われてもしかたない。では、私の話を誰も聞いてくれない寂しい状況にあるかというとそうでもない。聞いてもらえることもある。
大学では年に2回、全科目に対して学生が評価アンケートに回答し、その結果に対して教員側がコメント(指摘された問題点の改善策など)を公表する。今年度末のアンケートでは、毎回の講義で学生のレポートの内容を分析した結果から発見した事実をフィードバックしたこと、に対して学生から好意的なコメントがあった。講義の目的が共有でき、私の意図や思いが学生に伝わったことが嬉しかった。
コミュニティでの(リアルやオンラインの)会話の場でも、私の出した話題で盛り上がることはよくある。大抵は日常で発見したちょっとした出来事なのだが。先日は、数十年前に流行したフランス語のポップスが実はイタリア語の歌が原曲だったと気付いたことを話して、両者の音源をネットで見つけて聴き比べた。この場合は、そこにいた人たちがその曲や歌手の名前にすぐ反応してくれた(つまり知っていた)ことが大きい。高校の同窓会など同じ年齢の人が集まる場ですぐに会話が盛り上がるのも同じである。背景や前提など説明しなくてもすぐに通じる、同質な環境にあるからである。
多くの場合は様々な人が集まるコミュニティで過ごさなければならない。そこで自分の話が受けて会話がはずめば嬉しい。だから、受ける話題を探して話をする。その結果、そのコミュニティは同質化していく。すると、そこに所属するのが快感になり、同質化は加速する。私自身は、国であれコミュニティであれ同質化することは好まない。それは柔軟な思考を妨げ、創造性を失わせるからである。勿論、円滑なコミュニケーションのために周囲と共通の話題を持つことは必要である。ただし、それは最小限にとどめて自分自身の言葉で自分自身の関心事を伝えられることが重要だと考えている。
子供のうちは、他人の顔色をうかがうのではなく、自分の関心事を自分の言葉で発信できる機会を増やしてほしいと思う。大人になればそれが叶わない場面が増えるからである。できるだけ多様な考えを持つことを認める社会になり、新たな発想が生まれてほしいものだ。
自分の信念に従って行動する「高い志を持つ、市場価値の高い技術者」を育成します。
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コンサルティングと研修のサービスを提供します。
所長:石田厚子 技術士(情報工学部門)博士(工学)
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自分の関心事を自分の言葉で発信できる社会へ
2023.3.19