私には人生100年を元気に生きるための「信条」のようなものがある。例えば、身近なところでは「席を譲られたら決して断らない。妊婦さんには席を譲る」「100m先であっても必ず横断歩道を渡る」「お金を貯める最も有効な方法はモノを買わないことである」などである。小難しい理屈が必要なものとしては「ロールモデルは作らない。自分は他人のロールモデルにはならない」そして、「できないことを見つけたらできることを作る」がある。
年々、若い時にはできていたことができなくなる。ピアノが弾けなくなった。活舌が悪くなった。学生時代の教科書を見ても書いてあることが理解できない。散歩中、若い人に追い越される。そのようなとき、では練習して昔のようにできるようになろうとか、勉強しなおして理解しようとか、必死で歩いて追い付こうとかはしない。今までやったことのないことをやってできるようになればプラスマイナスゼロになると考える。74年間生きてきてもやったことのないことは沢山ある。そこから何かしら見つけてできるようになれば、ゼロからプラスに変わり、できなくなったマイナスを補えるはずである。
大学の情報の授業のセキュリティの部分に、量子暗号についての説明を加えようと考えた。専門ではないので量子力学の分かりやすい本を何冊か読んで理解に努めている。そんな時、お遊びのつもりで『シュレディンガーの方程式』を英語で言えるようになろうと考えた。まさに今まで見たこともない、意味もあやふやな式である。さらに、私は50年以上前に数学を専攻していたが数式を英語で言ったこともない(はずである)。それでもネットや様々な手段のお陰で何とか言えるようになった。これはかなりのプラスではないか。テレビドラマやCMでよく見かける俳優の名前が思い出せなくても「ま、いいか。シュレディンガーの方程式が英語で言えるようになったんだから」と余裕でいられる。
実は、今年になって新たにできるようになったことは結構ある。明らかにできなくなったことより多いと思う。『できること貯蓄』が増えているのだ。例を挙げれば、数年前に腰を痛めてからずっとできなかった「正座」「飛び跳ねること」「走り回ること」ができるようになっている。壁に世界地図を貼って毎日眺めることで、タイとベトナムとマレーシアの位置関係が分かるようになった。シルクロードのいくつかのルートを地図上で辿ることができるようになった。スペイン語とイタリア語の区別がつくようになった。
年金が主たる収入源である高齢者は収入を増やすことが非常に難しい。貯蓄は減っていく可能性が高い。それをできるだけ抑えるために支出を減らす努力をしなければならない。これはあまり楽しいことではない。一方、できること貯蓄の方は違う。支出(できないこと)が加齢で増えるのは止められない。一方で、収入(できること)を増やすのは可能である。なぜなら、世の中には未知のものが沢山あるので、どこかにできそうなことは潜んでいるはずだからである。例えば、散歩中に出会う鳥の名前を知る、見かけた草花の名前を知ることは、図鑑さえあればできる。インターネット上には知らない情報があふれている。そして何より、増やす努力は減らす努力より楽しい。来年もできること貯蓄を増やしていこう。
自分の信念に従って行動する「高い志を持つ、市場価値の高い技術者」を育成します。
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コンサルティングと研修のサービスを提供します。
所長:石田厚子 技術士(情報工学部門)博士(工学)
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新たにできることを作る、貯める
2022.12.04