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非日常から新日常へ


2021.11.21


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 非常勤講師をしている大学では、全て対面授業となった。ただし、同時にZOOMによる配信も行っているので私自身の働き方は変わっていない。教室にいる学生はこれまでの出席者数から考えてかなり少ない。明らかに出席率は落ちた。でも考えてみるとコロナ前に戻ったともいえる。元々、毎回一定数の欠席者はいたのだが、昨年度からのオンライン授業で出席率が大きく上がったのが異常だったのだ。深読みすれば、私の(つまらない)講義を聞くより、バイトや友人と会うなど学生がもっと価値があると考える行動がとれるようになったということだ。悲しいような、喜んでいいような、複雑な思いである。

 先日、ゴミステーションにゴミ袋を出しに行ったときハッと気づいた。私としたことが、マスクを忘れている。玄関を一歩出たらマスクを外さない、がモットーだったはずなのに。ゴミ出しの途中ですれ違ったご近所さんもそういえばマスクをしていなかったようだ。まあいいか、とつぶやくところが気持ちが緩んでいる証拠なのだろう。日常を取り戻しつつあるということなのか。いや、これから先は新日常(ニューノーマル)にならなければならない。つまり、日常 → 非日常 → 新日常 という流れがあるべき姿である。

 大学の授業で言えば、多分もう行わないであろうことが、テスト用紙を配って解答を書かせて回収して採点することである。これは大学の授業支援システムで十分行える。むしろより有効であることは2年近い経験から確認できた。問題の出し方には工夫が必要だが、私の授業におけるテストは記憶力を問うものではないので、時間を限って回収すれば十分評価できる。講義資料はすべてデジタル化されているので、授業支援システムで配信できる。ZOOMによる授業のリアルタイム配信はいつまで続くだろう。これは病気などで登校できない学生にとっては必要な手段のように思える。大学がどう判断するか注目したい。

 企業での働き方も大きく変わるだろう。確かにリモート会議では創造的なアイディアが出ないと私も実感している。でも、毎日顔を合わせる必要はない。個人個人が最もパフォーマンスの出せる場所と働き方を選べればよい。個の尊重と周囲との適度な距離間、そしてデジタル技術の活用、これらが新日常における働き方を決めるはずである。

 私が今一番したいことは旅行である。団体ではなく個人で行きたい。飛行機やバスではなく、列車を利用したい。閉じ込められるのが恐ろしいのである。特に団体のバス旅行で抵抗があるのが、集団でのバイキング形式の食事である。さらにこの流れでいくと、私自身は大人数の会食つまり宴会にはもう二度と参加しないのではないか。

 コロナ渦で大きなダメージを受けた旅行業界や飲食業界は、国内外の団体客の訪れを今か今かと待っているだろう。しかし、元に戻ることは期待できないのではないか。修学旅行も形を変える可能性が高い。同様に、飲食店では忘年会、新年会が行われることを期待しているだろうが、こちらもかなり小規模なものになるのではないか。気の合った人たちと静かに美味しいものを食べながら時を過ごす、充実した忘年会、新年会に変わると思われる。

 新日常は全ての業界に変化を求める。これは歓迎すべきだ。変化を恐れてはならない。



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