もう1年以上の自粛生活で、楽しみにしているものがどんどん減っている。そんな中で唯一、心待ちにしているものがあった。コロナ前に株式を購入したある会社の株主優待である。私がよく使っているお気に入りのスーパーを運営している会社で、株式を買ったのもこのスーパーを応援するためだった。株主優待は金券か食品を複数回届けてもらうかのいずれかを選ぶことができ、私は迷わず食品配送を選んだ。待ちわびていた最初の配送は4月下旬にあった。宅配業者が抱えてきた段ボールの箱には輸入食品が沢山詰まっていた。
食品の箱の中身は、パスタ類、オリーブオイル、粉チーズ、挽いたコーヒー、ツナ缶、サバ缶といった定番商品と、チョコレートシリアル、マンゴージュースのような嗜好品である。これらを箱から出して確認していたら、下から見たことのないものが出てきた。2種類のインスタントの袋麺(各5袋)と韓国のプルコギのたれである。
麺の袋を見ると、ベトナムのインスタントフォー、タイのトムヤムヌードルと書いてある。ベトナムに行ったことがあるのでフォーは食べたはずだが、全く味を覚えていない。トムヤムクンという言葉は知っていたが食べたことはない。プルコギのたれに至っては、プルコギが何たるかすら分かっていない。いつものように塩分のチェックをしたが、塩分を極力抑えている身であるので食べるのは止めておいた方が無難だと判断した。子供たちに会うときにおみやげにすることにして、箱の底に納めた。
首都圏のコロナ感染は収まらず、子供たちや孫たちに会うことも無く1か月が経ってしまった。箱の底にある麺の袋が気になる。まずはフォーを取り出して再度塩分量を確かめ、(もったいないけれど)スープを半分捨てることにして、野菜をたっぷり使って作って食べてみた。美味しい。何ということか、久しくこんな美味しさに出会っていない。ひょっとして日本向けに味を変えているのか。すっかり夢中になってしまった。そして後日、トムヤムヌードルもスープを半分だけ使って野菜たっぷりで作って食べてみた。こちらもとても美味しかった。嵌ってしまいそうだ。こんな時は「やばい」という言葉を使うのだろうか。
2種類の袋麺はこうしてお土産にすることもなく私のお腹に納まりつつある。残るのはプルコギのたれである。ネットで検索して何か料理を作らなければ使えないのだろうか。一人暮らしではその気にはならない。孫たちが遊びに来るのはいつのことになるのか分からない。原材料をよく読んでみると果物が4種類使われているらしい。味をちょっと確かめてみようか。冷蔵庫で冷やしておいた寒天にちょっとかけて食べてみた。びっくりするほど美味しかった。あっという間に寒天はなくなってしまった。次の日も朝から食べたくて、寒天パウダーを煮溶かして急遽作成した。どうしよう。こちらも「やばい」ことになりそうだ。
これほど感動するのには何か理由があるはずだ。大きいのは高血圧対策で塩分を極力抑えた味気ない食事を続けていることだろう。それでもコロナ前には飲み会やら子供たち孫たちとの食事やらで月に2,3度は美味しいものを食べていた。しかし長らくそれはない。多分、白黒写真ばかり見ていた人がカラー写真を見たときの感覚に近いのだろう。ちょっと情けなくはあるが、インスタント麺と「たれ」でこんなに感動できるのだから幸せかもしれない。さあて、第2弾は何が届くかな。ワクワクする。
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所長:石田厚子 技術士(情報工学部門)博士(工学)
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初めての味に感動する毎日
2021.05.30